不動産実務検定ブログ

2024/11/28

『相続税の圧縮率に騙されるな!』

こんにちは。
東京第4支部の岡部弘幸です。

▼ 岡部弘幸講師 プロフィール
https://j-rec.or.jp/koushi/show/206

収益不動産の節税効果

不動産投資でよく耳にする「節税効果」。
これって、本当でしょうか。

節税効果がよく謳われる所得税と
相続税について考察してみます。

■所得税

事業所得、給与所得が多い方は、
不動産事業で出たマイナス(主に減価償却費)を
損益通算して所得税を減額させる効果がありますが、

この物件を売却する時に、
過去に計上した減価償却費を取得費から控除するため、
最終的には譲渡税という形で課税されます。

仮に、1000万円で購入した物件を
5年後に1000万円で売却。

減価償却費が300万円のとき、
譲渡益は、次のとおりです。

譲渡益 = 売却価格1000万円-取得費
(購入価格1000万円-減価償却費300万円)
= 300万円

この譲渡益に対して、譲渡税率で課税されるため、

結局、償却した金額については最終的に譲渡税として
課税される仕組みとなっています。

長期譲渡の場合は概略20%の税率となるため、

個人所得の税率が20%を超える人にとっては
その差分が節税といえそうですが、

そうでない場合は、単に所得税を
譲渡税に繰り延べただけとなります。

「節税対策、節税対策」と言ってる割には、
さほど節税対策として機能していない様な気がしますが
如何でしょうか?

もちろん、割引率という考えに基づき、
早期に現金化してそれを再投資することによって
資産拡大を図るというのであれば話は別ですが。

■相続税

所得税については、税の繰延であり
節税とは言いづらい部分がありますが、

一方、相続税については、かなり節税効果は高いといえます。

それは、不動産の評価方法にあります。

1億円の現金の相続税評価額はもちろん1億円です。

その1億円でアパートを買うと、場合によって、
時価1億円の相続税評価額は半額以下になることも
珍しくありません。

不動産の評価については時価ではなく
路線価(土地)と固定資産税評価(建物)になり、

更には貸家建付地等の評価減、
小規模宅地等の特例が使えるからです。

例えば、時価1億円の不動産の評価額が5千万円だとしたら、
圧縮率は50%となります。

仮に税率が20%とすると、

[現金1億円]1億円×20%=2000万円

[時価1億円の賃貸アパート]5千万円×20%=1000万円

と1000万円も節税効果があります。

ここまでは、よくある節税スキームです。

上記をまとめると次表のとおりになります。
 
時価 1億円
簿価 1億円
評価 5千万円
圧縮率 50%
節税額 1千万円

そしてここからが、
世の中でよく見かける節税詐欺の仕組みです。
 
時価 1億円
簿価 2億円
評価 5千万円
圧縮率 25%
節税額 3千万円


[現金2億円]2億円×20%=4000万円

[時価1億円の賃貸アパート]5千万円×20%=1000万円

そうです。

同じ時価1億円の物件を2億円で買ってしまうと、
圧縮率と節税額が高まり、より節税効果が高いように見えます。

当然、通常より1億円高くかってる訳なので、
1億円損しているのですが、

これが通常1億円なのか2億円なのか、
多くの人はよくわかっていません。

確かに節税額が2千万円増えますが、
その前に1億円損していることは誰も教えてくれません。

なぜなら、紹介している側の利益だから、
わざわざそんなこと言いません。

節税効果と圧縮率、このマジックに乗せられて、
時価1億円の不動産を2億円で買う、
こんな非現実的な事が不動産の世界では普通にそこら中に存在します。


税理士に過度な期待

そして何より、ユーザーは
税理士にまともな顧問料も払ってないのに、
過度な期待をし過ぎている。

そもそも税理士は税金の申告が本業で
不動産の時価に詳しいとは限らない。

むしろ、詳しい税理士の方が珍しい。

そこで、税理士は圧縮率と節税額の話はするが、
時価は放置される。

「効果があると税理士の先生が言うなら、やりましょう。」
この流れになる。

そして、銀行と不動産屋から勧められるがままに、
サブリース契約をする。

これで、地主の骨までしゃぶり尽くす奴隷契約の出来上がり。

こんな方、あなたの近くにもいませんか(笑)

悪いのは誰ですか?
不動産屋ですか?税理士ですか?銀行ですか?

不動産屋は安く仕入れて、高く売る。
これが仕事です。
時価1億円のものを2億円で売ったのだから、

いい仕事したと社内で褒められることはあっても
怒られることはありません。

会社にかなり貢献しているといえます。

では、税理士でしょうか?
税理士は、2億円で買った不動産の評価は
5千万円になって圧縮率25%です。

と計算結果を伝えただけです。

何も悪くありません。

銀行ですか?

銀行は、あなたの与信と購入する不動産の
担保評価を見て貸しただけです。

もしかしたら、追加担保とかとられていませんか?

お金を貸せる人に貸す。

これが銀行員の仕事です。

取引金額が大きければ大きいほど、
銀行員にとってはいい仕事をしたと言えるでしょう。

そうです。悪い人などいないのです。

もし、「騙された」と感じる様でしたら、
騙された人が悪いのでしょう。

そうならないために、
不動産実務検定の認定講座を受講されてみては如何でしょうか?


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