不動産実務検定ブログ

2024/09/19

『壮絶なる勘違い 』

こんにちは。
東京第4支部 でこひろし こと 小野 隆志 です。

私自身の不動産投資実体験をベースにしたストーリー仕立てのコラムです。

第1回目からご覧になりたい方はこちらまで遡ってご覧ください。

第1回目 

私のプロフィールはこちらです。
https://www.j-rec.or.jp/koushi/channel/RtuRMuR


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【“投資”との出会い】

「瀧山さん、原因は分かりましたか!!」
自分でも語気が強まっているのが分かる。

「うーん、先月のシステム改訂で・・・いや、この部分が・・・」
(何ともハッキリしない・・・)

「さっきから、同じことの繰り返しじゃないですか!!」
イライラしても仕方がないのだが感情がコントロールできない。

とある日の早朝、でこひろしは担当していた
システムの復旧作業にチームメンバーである
瀧山さん(仮称)と共に追われていた。

夜中の2時にオペレーターから電話があり、システムがダウンした
との連絡を受けタクシーで駆けつけたのだ。

こういった事がしばしば起きるのだから、
本当に神経が休まらない。

今回のプロジェクトは、他社が担当していた
「曰くつきの大問題プロジェクト」を
頭のおかしい我が社の経営陣が受注し、

そのプロジェクトリーダーとして
私 でこひろしに白羽の矢を立てたのだった。

今回のチームは自社メンバーに加えて、
もともとその問題プロジェクトを担当していた
他社メンバーとの混成メンバーで構成された。

20代のフレッシュな若手メンバーから、
50歳を過ぎる年配メンバーまで年齢は様々。

男性メンバー中心のIT業界ではあるが、
チームには女性メンバーも複数おり、
見渡せば一癖も二癖もある人たちばかり。

そんな中、年の頃は40代後半の一風変わった男性メンバーがいた。
その人物が瀧山さんだった。

仕事に対する取組み姿勢はいたって真面目なのだが、
他のメンバーに比べると幾分飲み込みが良くない印象だった。

勿論、人によって得意・不得意はあるし、
担当する仕事に対するパフォーマンスだって

人それぞれなのはそれまでの社会経験の中で
理解していたが、それを差引いても、
残念ながらイマイチだった。

今でこそ、「働き方改革」だとか
「ワークライフバランス」だとか、

“長時間労働は悪!”という風潮が世の中には存在するが、
ほんの少し前までのIT業界はブラック労働なんて当たり前、

「24時間働けますか!」なんてキャッチフレーズは可愛いもので、
大げさでなく三日三晩寝ずに働き続けることすらあり得る業界だった。

まだまだそんな慣習が色濃く残っている時代、
特に今回のプロジェクトが「曰くつきの問題プロジェクト」であり、
日々、綱渡りのスケジュールを何とかやりくりしていただけに、

瀧山さんの生産性の悪さ、飲み込みの悪さがどうしても
目に付いてしまい、今回のようなトラブルの時には、
特に私の心をざわつかせていた。

早朝から対応していた不具合も一通り解消し、
システムは復旧を果たした。

他のチームメンバーも出社し、
何事もなかったかのようにその日も通常業務が始まった。
(ふー、ようやく落ち着いた・・)

「あー、やっとお昼休みですね」

建物の中には社内食堂があるので、
メンバーのほとんどはそこで昼食を取ることが多く、
今日も数人で昼食を取ることになった。

その日の会話は、早朝のシステムトラブルの
話題から始まったが、次第に「株式投資」の話に移っていった。

私はそれまで「投資」という類のものには
一切触れてこなかったし、「株式投資」に関しても
「ギャンブル」的な印象を持っていたように記憶している。

「お金」に対しては、“汗水垂らして得られる対価”として捉えていて、
それ以外の手段でお金を稼ぐのは「何か怪しい」

「どこか卑しい」「ズルいことをしている」
くらいのマインドセットだった。

ただ、お金に対する興味は人一倍あり、
もちろん稼ぐことに対しても本質的には興味があり、

言行相反なのだが、そんな自分の心中は悟られまいと、
その時は耳をダンボにして「株式投資」に関する話を聞いていた。

時の頃は2009年。

時代はリーマンショックにより株価が大暴落した後の
タイミングだったのだが、
話が「株式投資」の内容に移ると

瀧山さんが目を丸くさせながら
饒舌(じょうぜつ)に話題を展開していた。

「株式投資はかなり前からやっていた・・・」
「○○関連の銘柄に投資していて・・・」
「3億円ほどあった株式資産が・・・」

(・・・え?!3億円!!)

「ほんとですか。凄いですね!」
チームメンバーが相槌を打つ

「ただ、リーマンショックで・・・」
「2億くらいは吹っ飛んだかな・・・」

(・・・え?!2億円吹っ飛んだ?!)

「今はフィリピンで鳥を仕入れる事業に力を入れていて・・・」
「ガハハハ・・・」

(は?!何を言ってるの?)

一つ一つ、突っ込みどころ満載なのだが、
私のアンテナが一番反応したのは
「株式投資で3億円」の下りだった。

本当に意味が分からなかった。

それこそ、何から質問したら良いかさえ分からない状態。

普段、自分が頭の中で思い描いているお金の桁数とは
2桁も3桁も違う話しに戸惑ったこともあるが、

何よりもこの会話の主人公は、あのパッとしない
「イマイチの瀧山さん」なのだ。

そんな瀧山さんから、想像の斜め上のそのまた上の話の内容に、
戸惑いと、大きな衝撃を受けていた。

「億」なんて、宝くじが当たったほんの一握りの幸運な人、
天上人、もう雲の上の存在くらいに思っていたのが、

目の前のパッとしない「イマイチの瀧山さん」が
手にしているという事実に理解が追い付かない。

チームメンバーのほとんどは「人は見かけによらないな」
とか、純粋に「凄いな」と感じていたのかもしれないが、
でこひろしは違った。


「え、まぢで!この人に出来る(手に入れられる)のだったら、
自分にも出来るんじゃないか!どうやるんだ??」


と、この時のでこひろしは壮大な勘違いをしたのだ。

あくまでもパッとしない「イマイチの瀧山さん」は、
私の中ではパッとしない「イマイチの瀧山さん」前提であり、

そんな瀧山さんが「億」を手に出来るんだったら
自分にも出来るはず!と何とも自分勝手な思考回路で解釈したのだ。


<つづく>

※ この物語は事実をベースにしていますが、あくまでもフィクションです。実在の人物や団体、また出来事に関しては、類似があったとしてもそれは偶然です。
 

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