不動産実務検定ブログ

2021/02/02

『不要な不動産(土地建物や山林)の含まれる財産を相続放棄する場合の注意点』

先日、お客様のA様からこのようなご相談がありました。


東北地方の山間部に住んでいたお兄様が最近お亡くなりになり、
そのお兄様の財産を相続しようか、それとも放棄しようか迷われているとのことでした。


お兄様は生涯独身者であり両親も他界しているため法定相続人はA様お一人で、
財産は築50年程の木造住宅とその敷地、約2,000坪の山林、そして僅かな預貯金です。

相続税は財産総額が基礎控除内でかかりません。


A様は、それらを相続すれば管理責任も発生するし、山間部の土地は売却できるか不確定なため、
相続放棄をしたほうが良いのではと考えていたのです。

A様が相続放棄をすれば、他に相続人がいないため、それらの財産は国庫に帰属することになります。



しかし、ここで注意点がでてきます。

仮に相続放棄をしたとしても、A様の管理責任が直ぐに無くなるわけではないということです。



民法 第940条1項

「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」



上記の通り、相続放棄をしても、
次の順位の方が相続財産の管理を始めることができるまでは管理をしなければなりません。


今回の場合、A様が相続放棄をしたら相続財産は国庫に帰属しますが、自動的に国の所有になるわけではなく、
国庫に帰属させるためには、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、

相続財産管理人にお兄様の住んでいた家屋や敷地、
そして山間部にある山林の管理などを引き継がなければなりません。



ちなみに、相続財産管理人とは、
相続に関して利害関係がある人等の申立てにより家庭裁判所が任命する相続財産の管理や清算をする人のことですが、
相続財産管理人を選任するには、
選任の申立ての際に予納金として数10万円~100万円程度を納める必要があります。


また、相続財産管理人は業務として相続財産の管理清算を行うため報酬も発生します。

相続財産管理人の報酬や諸経費は、基本的には相続財産から支払われるのですが、
今回のように相続財産の金銭が不足しそうな場合には申立人のA様が負担しなければならなくなります。



更に、今回のように処分が難しい山林の土地などが残った場合、
国が国庫への帰属を拒否するおそれも出てきます。

その場合、土地が処分できないために相続財産管理人の業務がいつまでも終了せず、
選任を申し立てた人は、相続財産管理人の報酬を払い続けるということにもなりかねません。

そして、結果的に相続をしたほうが安く済んでいたというような事態に陥ってしまうこともあるのです。



結果、今回に関しては、A様は相続放棄をせずにお兄様の財産を全て相続することにしました。

管理責任はあるものの、相続した土地を全て時間かけてでも処分する方法を選択したのです。
仮に相続税がかかっていたとしたら、税額にもよりますが、放棄したほうが得の場合もあり得ます。


以上のように、
不要な土地が含まれる相続財産がある場合には、放棄をするにも十分な注意と検討が必要と考えます。




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埼玉支部 さいたま大宮SG
J-REC公認 不動産コンサルタント
 
新井悟史
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